経済同好会新聞 第243号 「政治、経済も三流国家」
政治、経済も三流国家
法人税減税は賃金の停滞を招く
かつて、カルロス・ゴーン率いる日産自動車は大がかりな経費削減を断行し、会社自体は持ち直した。不景気時の経費削減はやむを得ず、企業にとっては合理的選択になる。特に大手はそうなりがちだ。
ここで注目すべきは経費削減。経費は複数の項目に渡るが、労働者の賃金も経費から支払われている。つまり、不景気になると削減対象になるのは経費から支払われる労働者の賃金、あるいはリストラが行われたり、設備投資を減らすということになる。労働者の生活を守ろうとする企業は大半であろうが、その際には人件費以外の固定費を極力削ろうとするだろう。経営者は相当苦しいはずである。
苦しい中小企業にとって法人税率が低いのは願ってもないことかもしれないが、労働者への給料を上げられるかと言えばそうではない。景気が良くなるまで内部留保で凌ごうとするからだ。体力のない企業は設備投資も当然できない。
しかも、上場企業の純利益が過去最高だった数年前でさえ、労働者の賃金が上がらない事態が続いていたのだ。法人税収は増えたが、それでも消費税率が5%に引き上げられた橋本龍太郎政権時より低い。約30年前より低いというのは驚くべきことであり、異常事態である。
更に異常なのは株主への配当金が飛躍的に増加していることだ。これは利益から配当されている。
もう一度確認したい。
・労働者へは経費から支払われる
・株主へは利益から配当される
法人税が低いと利益が出ているように見えるが、内実は内部留保が起きやすくなる。企業の利益から株主に配当されるが、経費から支払われる労働者の給料は上がらない、或いは削減される。 これではいつまで経っても労働者の所得は上がらない。人件費を抑制しながら利益を出したところで、多くの労働者の賃金が上がらない、或いは下がるのであれば、消費が減退するために日本経済は停滞するばかりだ。
法人税率が高いと
当新聞第239号にも触れているが、法人税率が高い場合、徴収される税金が大きくなるため、そうならないように設備投資や労働者の賃金を上げ、徴収される税金を極力抑える。法人税増税は言い換えると、設備や人材に投資しない会社への罰金である昔の政治はこのようにして企業を成長させ、賃金も上がるようにしてきたのだ。ところがこの数十年はどうか。
財務省は法人税率を下げることにより企業の設備や人材投資等を促しているが、事実は真逆なことが起きている。 法人税を下げないと企業は海外に逃げる等という言説も、大手企業が内部留保で日本国内よりも海外に投資していることを覆い隠すものだろう。商売相手は日本人より海外ということである。
言うなれば法人税率を引き下げ、人件費というコストをカットすることで利益を出す。つまり、経済が停滞している方が利益が出るということになる。日本にいながらそう出来るのだから、海外に逃げるわけがないではないか。
この状況は大手企業の一部の人達にメリットはあるが、後の全ては経済停滞に巻き込まれデメリ ットでしかない。竹中派遣企業のみならず、経団連、お前もか!