経済同好会新聞 第329号 「財政より経済を見よ」
財政より経済を見よ
バランスは財政、否、経済だ
少し思考してみよう。日本に住まう人々が経済的に困っていない、そこそこ経済成長しているとする。これは経済全体のバランスが取れた状態だが、一方でこれによって政府部門が赤字の場合はどうだろう。前号で述べたように、政府部門が赤字であった場合は、非政府部門は黒字だ。我々は喜ぶべきなのか、憂うべきなのか。管理通貨制度にあっては、これは喜ぶべきことだ。政府が赤字を出すことによって、我々国民の経済はバランスされているのだから。
ところが、現在は財政のバランスを取ろうとしているため、経済全体のバランスが崩れている。これは悲劇だ。重要なのは財政ではなく、経済全体のバランスをとることである。財政を重視すれば経済は傾き、経済を重視すれば財政(政府)は赤字になる。管理通貨制度において、財政赤字は問題にならないことはこれまで述べて来た通り。したがって、見るべきは経済全体のバランスなのだ。
経済のバランスが崩れる時
この数十年の日本は、消極財政(緊縮財政)により、経済のバランスを崩している。これとは別な崩れ方に、税金を全く徴収しないことが挙げられる。どうなるか。物価が上昇していくため経済が過熱、いわゆる過剰なインフレになってしまう。どちらも経済のバランスを崩すため、税金は経済の調整弁として役目を果たすために必要なのだ。特に重要なのは、経済の自動安定装置である「累進課税」で税を徴収することが大前提になる。そのような意味では、消費税は逆累進性のある税金であり、廃止すべきなのだ。経済のバランスを欠く原因となっている。この他、法人税率の引き下げは、労働者への分配に悪影響を与えるため、これも経済のバランスを欠く要因となる(当新聞第325号に関連記事)。
このような経済のバランスを欠くことをしてしまうのは、前号で述べたゴドリーのモデルを理解していないからである。もう一度見てみよう。
政府が財政赤字(黒字となる時、民間部門と海外部門の収支の合算は必ず黒字(赤字)になる。
このモデルからは、消費税は民間部門からお金を回収しているため赤字だ。政府部門は黒字になる。そのため、経済は停滞してしまうのだ。こんなことを数十年もやっている。
政府が黒字化する場合というのは、民間部門である経済が過熱している時だ。なぜならば、税収が増えるからである。しかし、これには条件がある。先述しているが、税制が「自動安定化装置」を果たしていることだ。ところが、税制が破壊された我が国で税収が増えているということは、民間部門の赤字が増えたということの証左である。加えて、格差拡大しているということは、富が偏る税制であることの証左なのだ。
このように、「国の借金がー!」と言い、国家財政の一側面のみを見て判断することは、片手落ちである。経済のバランスを見ることが肝要なのであり、そのためには何が必要であるかの考察が欠かせないのだ。これらがなされていないため、我が国の数十年は、経済は停滞、少子化が進み地方も衰退した。我が国は管理通貨制度、財政より経済を見よ。