経済同好会新聞 第304号 「税制に無頓着な日本」
税制に無頓着な日本
低所得者を生み続ける政治の大罪
政府が国民に税金を課す際、所得の高さに応じて税率が上がる「累進課税」と、所得の高低に関わらず一律に課税する「フラット税」がある。そして、国民というだけで一律に課税する「人頭税」がある。人頭税は行政サービスを受ける名目で、一人当たりいくらかで課税するものだ。例えるなら、国民全員で割り勘し、その分のお金を税金として納めなければならない。どれだけ困窮していようが、強制的に納めさせられることになる。
日本は海で囲まれているが、陸続きの国で人頭税を導入したところ、国外へ逃げる人が出てしまったため廃止されている。人頭税を日本で導入すれば、貧困者は国外へ逃げることもままならず、自己責任論の強い我が国では自殺者が増えることは必至だろう。
イギリスのサッチャー政権は1990年に人頭税を導入、同年に国民から大反発があり辞任している。人頭税のような一律に課す税(フラット税)は、自民党の高市議員も所得税の一律化を述べており、最大限に警戒すべき総裁候補である。高市議員が尊敬する人物がサッチャー元首相であることからも、世界観が似ていると判断すべきであろう。当新聞第299号でも述べた通り、人頭税は竹中平蔵パソナ会長が以前から提案しているものでもあり、相当に警戒が必要だ。竹中氏と関わりのある維新に然りである。
当新聞で何度も伝えてきたことだが、累進性のある税金は所得のない者は免税され、所得が多くなるにしたがって税率が上がっていく。その一方で消費税は一律に課税されるために累進性が皆無。フラット税がどれほどの悪税であるか理解できるだろう。
弱者に厳しい社会
我が国の異常さは、ワーキングプア問題を放置し続けているところ。むしろ、労働規制の緩和や移民受け入れをやり、低賃金労働者を増やす政策をしている。 国家の永続を考えたならば、国民の安全と安定のために何をすべきかは自ずと定まるのである。我が国に足りないのは、ケインズが言った次の言葉である。
今日、経済学にとっての主要な課題は、おそらく、政府の「なすべきこと」と「なすべからざること」を改めて区別し直すことである。
社会保障の名目で消費税を課し、社会保障を受ける人からも消費税を徴収する大矛盾。復興税と言い、被災者からも税金を徴収する鬼畜の所業。教育無償化どころか、大学生に大きな借金を負担させる奨学金制度。とことん弱者に厳しいのだ。
人が死を意識する時というのは、将来不安と恐怖からである。不安は自分自身を追い詰め、精神を病んでしまうのだ。どれだけ強靭な身体をもってしても、精神が蝕まれてしまえばどうにもならない。死を選ぶ人が弱いのではなく、追い詰めてしまう社会構造や精神論で凌ごうとする風潮がそうさせるのだ。
自殺者は急に死ぬわけではなく、精神が追い詰められる期間を経ている真面目な人ほど自殺する傾向があるのは、それだけ自分自身で努力してきた裏返しだ。人に迷惑をかけたくない、それが恥ずべきことだと人に悟られぬよう隠し、誰に相談することもなく、どんどん追いつめていき自殺するのである。相談したとしても、精神論で乗り切らせようとすれば、逆効果、絶望と共に追い詰められていくのだ。