経済同好会新聞 第310号 「弱者に厳しい制度化」
弱者に厳しい制度化
つじつま合わせ、消費税の害悪
政府はフリーランスを推進しておきながら、ここへ来てまた梯子外しをするようだ。2023年10月より導入予定のインボイス制度だ。インボイス制度とは、年間売上一千万円以下の事業者に対し、消費税の免税利益(益税)を抑え込み、納税の不公平感を解消する制度である。現在は消費税の支払いの免税対象であるが、これを課税事業者として登録を余儀なくされる。
本来は小規模事業者の納税事務負担を配慮、納税義務を免除し、煩雑な事務処理から最低限の生活を保証するところに免税事業者制度の理念があったのだ。消費税率が上がるに連れ、課税対象である事業者から不満が漏れはじめ、免税事業者からも徴税する機運が財務省や各省庁で議論されはじめたことがインボイス制度の導入の運びである。実に本末転倒な話だ。消費税率を引き上げたのは政府であり、それはそのまま政府による人災である。この上でまだむしり取るつもりだ。弱いところからでも取る発想は、今に始まったことではない。
免税事業者制度自体が廃止されるわけではないものの、インボイス制度が導入されてしまえば、課税・事務負担が増えるだけで損でしかなく、徒労感がつきまとうだろう。インボイス制度は課税事業者へと誘導していることは明らかであり、事実上の免税事業者制度の廃止である。この鬼畜ぶりは異常であり危険極まりない。弱者からも容赦なく課税する消費税、復興税を被災者にも課税するほど狂っている我が国の政治。到底人間が考えることとは思えぬ。
税の減収を許さない政治
我が国の税制の異常さはこれまで当新聞で述べてきたが、軽減税率の穴埋めとして「総合合算制度」の導入を見送っているところも冷酷だ。
「低所得者の家計に過重な負担をかけない」観点から、制度単位ではなく家計全体を トータルに捉えて、医療・介護・保育・障害に関する自己負担の合計額に上限を設定(厚生労働省)
低所得者の負担を軽くするために設けられたこの制度を見送り、軽減税率で低所得者の負担を軽くする。お前は何を言っているんだという具合だ。これと同様に、東日本大震災の復興のために復興税をと言いながら、被災者からも徴税しているのだ。 消費税もお前は何を言っているんだという最たるものであり、社会保障を受ける人達のために消費税で社会保障費に充てるとしているが、消費税は全ての物やサービスにかかる税のため、当然のことながら社会保障を受ける人も課税対象である。
ここからも分かるように、あっちを減らせばこっちを増やすことをしているのだ。弱者に負担がかかるため、国民に対して「やむを得ない」感情を抱かせるために、復興のためやら社会保障のためやらと、国民を思考停止させた上で理不尽な政策を放り込んでくるのだ。
セーフティネットの観点からは、これら一方は減税、一方は増税する発想は出て来ようがない。つまり、救済に妥協することを容認しよと言っているのである。それを悟られないよう、言葉で誤魔化してくるのだ。そのため国民は、政治を監視し、議員に声を届けることが大切なのである。政治の誤りを糺すために。